真壁清次郎の一言物申す!~第9回。
 そこは訪れる者も絶えて久しいとある山道。
 かつては『霊場』として信仰の対象にされてきたこの地に住まう者はおらず
 夕陽を西の空へ見送って間もないとはいえ灯り1つ無い山中は漆黒の闇に覆われ、
 絶え間なく静かに降り頻る霧のような雨が落ち葉の積り重なった足場を更に悪くする。
 そこは時刻的にも天候的にも、人が好んで立ち入るような場所ではなかった。
 
 ――だが、敢えてその山道を往く2人の男の姿が、そこには在った。
 先を往くのは、威風堂々と肩で風を切りながら躊躇うことなく歩を進める恵まれた体躯の男。
 後に続くのは、周囲の気配と物音とに過敏に反応しながら身を縮み上がらせる頼りない優男。
 人気も人目も無い山道を往くこの2人……実は絶賛指名手配中の逃亡犯であったりする。


真壁元博士「諸君ご機嫌よう。1度はこの熱烈な人気を妬む者の謀略によって囚われながらも
 全国各地から寄せられる支持者たちの応援の声と、1日に1度は私の姿を見・声を聞かなければ
 心と身体が疼いて夜も眠れない日々を過ごしている迷える仔猫たちの為にと意を決し満を持し
 久方振りの公の場へと復帰することとなった、真壁清次郎である

 

 それでは早速、全知全能にして超絶イケメン、将来の人間国宝入りが内定しているこの私が
 世間の様々なことに対して鋭く穿った持論公論を物申す、《真壁清次郎の一言物申す》の時か」

宗方助手ちょっと待って下さい、いきなり何を始めるかと思えば……。
 元はと言えば先生が他人様のコーナーを横取りして怒りを買った挙句、性懲りも無く2度目の
 不法侵入をしたところで警備の幽霊にフルボッコにされて牢屋に放り込まれ、一応義理立てて
 面会に行った僕を巻き込んで脱獄なんかした結果……こんな暗くて危険な山道に迷い込んで、
 そこで元々応援も支持も無い糞コーナーなんか再開して、脳味噌は大丈夫ですか?

真壁元博士「はっはっはっ、ノープロブレム。それにしても宗方、
 大人気のテレビ番組《いつみても波瀾万丈》でも1時間で語ろうにも語り尽くせない
 我が波乱のサクセスストーリーを視聴者に分かり易く、かつさり気なく紹介したその手腕……
 やはり敢えて巻き込んだこの逃亡生活によって大いに成長したようだな。私に感謝したまえ」
宗方助手絶対嫌です。そしてついでに誤解が無いように言っておきますと、
 大人気テレビ番組《いつみても波瀾万丈》はとっくの昔に放送が終了していますし
 先生のろくでもない奇行禄だなんてのは後番組の《誰だって波乱爆笑》の合間の
 スポンサー紹介の背景での無音声30秒間で猿でも理解できるレベルで紹介可能
です」

真壁元博士「うむ、やはり漢(おとこ)というのは口ではなく拳と肉体だけで全てを語らねばならん
 実に不器用極まりない生き物だな。しかし残念ながら私のこの甘く優しい声音に癒されたいと
 心の底から熱望する全世界の女子の為に、漢・真壁清次郎、あえて物申さねばならん
のだ」
宗方助手「あ。あそこにケーブルカー乗り場があるから雨宿りしましょう」
真壁元博士「それでは今回、私が物申したいのは――
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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

【 2014/10/08 16:38 】

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