もしカボ~もしも繭専用カボチャを澪が被ったら。
 幼き頃の双子の兄弟姉妹は、お揃いの物を身に付ける傾向が強い。
 これは年の離れた兄弟姉妹でさえ起こり得る、お互いの“無い物ねだり”――
 “隣の芝生は青く見える”心理からくる、取り合いの喧嘩を抑える為であろう。
 最も身近な存在である双子の片割れ、同じ顔、同じ姿をした他人……
 その両者の争い事を防ぐ為という意味合いが強いと思われる。

 既に自意識を強く持ち、お互いの相違点や得手不得手を差別化するに
 十分な年齢に達した天倉繭と澪の双子姉妹にとっては最早記憶にも朧な遠い過去だが、
 最近……澪は、姉の繭に対してある種のジェラシーを抱き、心をモヤモヤさせていた。
 それが――

「ねえ、お姉ちゃん……。そのカボチャの被り物、私も着けてみても、良いかな」



 時折繭がどこからともなく持ち出してくるカボチャの被り物。
 ここが怨念と悪霊が渦巻く危険な世界だということすら、
 射影機越しに観ると綺麗サッパリに吹き飛ばしてくれるカボチャの被り物。
 双子の姉の服装に対して、双子の姉の持ち物に対して、
 今や抱くことはなくなったと思っていた“無い物ねだり”、“隣の芝生は青く見える”心理。
 久方振りに湧き上がった幼き頃の懐かしい感情に、澪は遂に耐えられなくなったのだ。

 しかし一方の繭はそんな妹の我が儘に嫌な顔1つせず、
 快くカボチャの被り物を譲ってくれるのであった。

「澪ってば、幾つになっても欲しがり屋さんだね」
「えへへ」

 そして念願のカボチャの被り物を装着して意気揚々と、
 澪は鼻歌交じりに怨念と悪霊が渦巻く危険な世界へと踏み込んで行くのだった。



「あれ……く、暗くて観えない、狭くて見渡せない、扉……扉は、どこ」
「澪、右手をもうちょっと伸ばして。そう、そこ。ああ、違う違う。あ、頭に気を付けて」
「あ痛!」



「澪、悪霊が来たよ! 射影機、早く射影機を構えて!」
「ちょ、ちょっと待って……射影機どこ、手元が全然見えなくて……
 あ、あれ、射影機が顔まで届かない、シャッターってどこ、悪霊はどこ」

「きゃあー! 澪、助けて!」
「お姉ちゃん、私も助けて!」




 澪の1つの好奇心、ふとした出来心が生んだのは
 史上稀に見る凄惨なグダグダプレイの悲劇だった。



「ごめん、お姉ちゃん。私にはこっちの帽子が良いみたい……」
「でしょ。こんな物は見えないし動き辛いし息苦しいしで、全然良いこと無いんだから」

 ――そう思うなら、どうしてお姉ちゃんはこんな物を愛用してるのだろう……。
 最も身近な他人の、到底理解できそうにないその行動に、澪は心が離れていくのを感じていた。



Xbox版【FATAL FRAMEⅡ】にて、繭専用アクセサリとして追加されたカボチャ頭

昨日のハロウィンネタへ、ハコヤナギ様より頂いたコメントから派生し考えてみた、
繭のカボチャ頭をもしも澪が被ったらどうなるか――というネタ。

予想。たぶん色々と大変なことになる。
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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

【 2013/11/01 11:48 】

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