その中を見ちゃ駄目だ。
 古来より人々は《てるてる坊主》を軒先にぶら下げて晴天を祈願してきたという。

「――という訳で作ってみたわてるてる坊主出血大サービスで2つも

 かなりの労力を費やしたのだろう、額に滲む汗を拭う氷雨と
 軒先に吊るされた2つのてるてる坊主を見上げて満足気に――少し不気味に微笑む水面。

 てるてる坊主作りを始めた2人のためにとお茶を用意しに行った時雨が、
 しかしお茶請けのお菓子に夢中になっている間に、
 材料探しから制作・完成までの全工程は恙無く終わっていた。

「わぁ。すっご~いおっき~い」

 結局お茶しか載せられていない盆を置いて、
 軒先にぶら下がった2つのてるてる坊主に無邪気に感心する時雨。

 片方は彼女たちとあまり変わらぬ大きさ、
 片方は彼女たちよりずっと大きく長い。
 そのどちらも表面はちょっぴり赤黒く変色した布で覆われているため、
 中身の材料は分からない。

 それでも時雨はそんなことなどお構い無く、氷雨たちが作り上げた超大作に感動しっ放しだ。

「ふふん。これであの侵入者も――今日も雨ですねとか何とか言いながら、
 完全に上の空で私たちを無視できなくなるはずよ」

 元々、雪は降り止まないが雨なんて一滴も降っていない久世の大屋敷。
 そこでてるてる坊主を作ろうなどと思い立ったのは、
 鎮女たちが幾度挑もうとも『今日も雨ですね』と言いつつ適当にあしらってきた超霊感娘に
 少しでも自分たちの存在を見せ付けるためだった。

 そのために作り上げた2つのてるてる坊主、
 そのために捧げられた2つの生け贄……。

 暫してるてる坊主を眺めていた時雨がふと思い出した。

「あ。そういえばさっき当主様が雨音ちゃんを探し回って――て
 あれ、2人とも大急ぎでどこ行くの

 何も言わずそそくさとその場から去る氷雨と水面。
 その後を追おうとした時雨の足が、
 床に描かれていたおぐふぁという血文字を踏んで、滑ってコケた。



てるてる坊主にされた2人についてはあえて触れません

蒸し暑い日々を涼しく過ごす、ちょっぴりホラー
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テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

【 2010/07/01 17:14 】

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